脱炭素社会に向けて日本政府は木材の利用を推進。それに伴い、オフィスや商業施設などの内装を木質化する企業が増えています。では、“木”を活かした空間は、そこで働く人にとってどのような効果を生むのでしょうか?
グリーンデジタル&イノベーション株式会社の役員で、国産木材を使用したオフィス内装パッケージ「キイノクス オフィス」の企画・開発をされた石川玄哉さんに伺いました。
石川玄哉 プロフィール グリーンデジタル&イノベーション株式会社 取締役 株式会社KIJIN 代表取締役 木に特化したクリエイティブディレクター 2008年に明治大学を卒業後、専門商社株式会社山善に入社。量産家具の商品企画部門に従事。働く中で、耐用年数の短い量産家具の限界を感じ、2012年末に脱サラ。2013年に知識・経験・人脈ゼロの状態から、オーダーメイド家具屋をすべく独立。永く人と共に生きれる木材に特化したオーダーメイド家具屋「KIJIN」を設立。2021年キイノクスオフィスを立ち上げ、オフィス木質化事業を展開。 |
オフィス木質化のメリット①木のリラックス効果でQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上
オフィスの木質化によるメリットのひとつは、そこで働く方々のQOLの向上だと考えています。
林野庁の「科学的データによる木材・木造建築物のQ&A」によると、木が人にもたらすリラックス効果について、スギチップの香りによって血圧の低下が確認されたり、木の内装材の室内ではストレスの指標となるアミラーゼの活性化が抑えられたりと、さまざまな実験結果が報告されています。
このような研究から、木質化された空間にはストレスの軽減が期待できると言えるでしょう。
とくに杉などの国産木材は日本人にとって馴染み深い香りなので、より気持ちが落ち着く素材だと思います。外国産のオークやウォールナットでも見た目はあまり変わりませんが、どこか懐かしい香りでほんわかできるのは、国産材ならではの魅力ではないでしょうか。
キイノクス オフィス製品の多くはその香りや質感を大切にするため、国産木材を無塗装で仕上げています。塗装せずに木の味わいを残すことによって空間のリラックス効果は高まり、心身ともに癒やされながら働きやすくなる、というわけです。
ちなみに、キイノクス オフィスを導入された企業の方から「気付いたらデスクを撫でていた」というエピソードを聞きました。しかも切羽詰まった内容の電話中、無意識に撫でていたと。まさにストレス軽減の役に立った例と言えそうです(笑)。
それから、木のワークブース「WOOBO」について、「中に入ると深呼吸したくなります」との声もいただきました。どんなに洗練された最先端のオフィスでも、業務中に深呼吸したくなるタイミングって、建物から外に出たときがほとんだと思いますので、このような感想はとても嬉しいですね。
木質化されたオフィスなら、会社の中で深呼吸したくなる、そしてリラックスしてまた仕事に臨める……これは木にしか出せない良さですし、働く方々のQOLが上がる要素になると考えています。
オフィス木質化のメリット②モチベーションアップ&コミュニケーション活性化
キイノクス オフィスの機能性は、ユーザーフレンドリーを意識しています。バリエーション豊かなデスクや会議スペース、充実した収納、置くだけで完成する無垢フローリングなど、使いやすい製品を揃えました。ひと目見たときに「いいな」と思ってもらえるように、デザイン性にもこだわっています。
木は魅力あふれる素材ですが、それだけで構成すると野暮ったくなりやすいんですね。なので、スチールやファブリックなどの異素材と組み合わせることでスタイリッシュに仕上げました。デザイン性の高いオシャレなオフィスというのは、モチベーションアップに繋がると思うんですよね。
さらにキイノクス オフィスが提供する製品はどれも手入れをしながら長く使えるため、使い続けること自体がサスティナブルな世の中をつくることに貢献できますし、国産木材の利用と植樹をおこなうことでカーボンニュートラルへの貢献もできます。
SDGsへの意識の高いオフィスで働くことで、社会貢献の意義も感じられる。それもモチベーションアップのポイントになるはずです。
出典:内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を加工して作成
近年ではテレワークを実施する企業が以前よりも増えて、出勤しない働き方も一般的になりつつありますが、テレワーク自体にストレスを抱えている方も少なくないようです。
コロナ禍に関連した生活や行動の変化について、内閣府が実施したアンケートを見てみると、社内でのコミュニケーション不足が原因でストレスを感じている方が多いこともわかります。「テレワークはもう限界」「オフィスで仲間と議論や雑談がしたい」……そう感じている方たちにこそ、キイノクス オフィスをぜひ利用してもらいたいですね。
木がもたらすリラックス効果は心身を健やかにする傾向がありますし、SDGsとサスティナブルを意識したオシャレなオフィスはモチベーションアップにも繋がることでしょう。
実際にキイノクス オフィスを導入した企業の方から、木のある和やかな雰囲気になることで雑談や相談などのライトコミュニケーションが増えたという声もいただきました。
いくつもある会議室の一室に、キイノクス オフィスを導入された企業もありまして、ありがたいことにその“木の会議室”が一番人気なのだそうです。理由を伺うと、木の会議室でのミーティングは話が弾んで盛り上がることが多いとのこと。
このようにオフィスが木質化されれば、仲間との会話が弾みやすくなり、コミュニケーションの活性化にも繋がると思います。
さらに、ひとりで集中したいときにはワークブースの「WOOBO」が役立ちますね。自由なコミュニケーションがとれて、メリハリのある働き方ができるようになれば、よりいっそう魅力あるオフィスに仕上がるんじゃないでしょうか。
オフィス木質化のメリット③最大約4.5%の作業効率アップ
出典:ヤマガタヤ産業と岐阜大学 光永教授との共同研究データ
意外に感じるかもしれませんが、木質化された空間では作業効率アップにも期待できます。
キイノクス プロジェクトのパートナー企業であるヤマガタヤ産業さんが岐阜大学の応用生物科学部・学部長の光永教授とともに実施した実験があるのですが、驚きの結果となりました。
内装の壁材がクロスの部屋と比較して、木質空間では作業効率が最大4.5%上昇したことが確認されたんですね。木のもつリラックス効果などが、より集中力を高めてくれたと言えるでしょう。
人への“想い”をかたちにした木のオフィス
私が木のオフィスや家具にこだわるのには理由がありまして……大学卒業後に就職した会社では量産家具の部門に配属されたんですが、そこで働くうちに家具が大量生産・大量消費されていくことに違和感を覚えたんですね。
たとえば一般的にカラーボックスなんかは、10年も使えば「がんばって長く使ったね」と言われます。
しかし、それは家具の本質とは違うと思いました。たとえば伝統的な桐タンスは、お祖母ちゃんの代から孫娘の代まで嫁入り道具として受け継がれ、ずっと大切に使われていくんです。
そんなふうに、思い入れのあるものを長く使うことが生活や心を豊かにするし、そういう世の中であってほしいという願いもあって、“一生使える家具をつくりたい”と独立し、今に至ります。
そして、一生使える家具=愛着がもてる家具をつくる素材として、木を選びました。
人に優しく長く使える木なら、作り手の想いを込めたものづくりができる。想いのこもった家具だからこそ、人の人生に寄り添えると思ったんです。
“想”という漢字は、分解すると「木」「目」「心」になりますよね。木目の下に心がある……心を込めて木材からつくり上げたものには“想い”が宿るってことだと思うんです。
キイノクス オフィスもまた、働く人たちへの想いを込めた製品です。今後も多くの方が心豊かに働けるようなオフィスづくりをサポートしていきたいですね。
キイノクス オフィスのショールームは、BIPROGY株式会社豊洲本社(東京都江東区)にて、常時展示中です。見学をご希望される場合は、お問合せフォームよりご希望日時をご連絡くださいませ。