コラム
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2023.10.17“木の力”でカーボンニュートラルを実現! 国産木材の利活用が注目される理由

2020年10月、日本政府は脱炭素社会に向けて、カーボンニュートラルを目指すことを宣言。2050年までにCO2(二酸化炭素)の排出量を減らしつつ吸収量を増やして“差し引きゼロ”とするため、さまざまな企業や自治体に協力を呼びかけています。そのなかでも重要視されている項目のひとつが、国産木材の利活用です。なぜ国産木材の利活用がカーボンニュートラルの実現に繋がるのでしょうか? グリーンデジタル&イノベーション株式会社の役員で、キイノクス オフィスの企画・開発をされた石川玄哉さんに伺います。  

石川玄哉 プロフィール
グリーンデジタル&イノベーション株式会社 
取締役 株式会社KIJIN 代表取締役
木に特化したクリエイティブディレクター
2008年に明治大学を卒業後、専門商社株式会社山善に入社。量産家具の商品企画部門に従事。働く中で、耐用年数の短い量産家具の限界を感じ、2012年末に脱サラ。2013年に知識・経験・人脈ゼロの状態から、オーダーメイド家具屋をすべく独立。永く人と共に生きれる木材に特化したオーダーメイド家具屋「KIJIN」を設立。2021年キイノクスオフィスを立ち上げ、オフィス木質化事業を展開。

 

日本の森林課題と国産木材の利活用が必要な理由

カーボンニュートラル実現のために国産木材の利用が推奨されている理由ですが、話は約50年前までさかのぼります。高度経済成長期、日本の経済と人口が急成長するなか、家を建てるために大量の木材が求められました。もともと日本の山林に生えていた天然の木を伐採するだけでは足りず、成長が早くて建材に適したスギやヒノキなども大量に植えたわけです。

しかし、スギやヒノキを植林したあと、日本では外国産の木材がもてはやされる時代が訪れます。安くて使いやすいからですね。そのため、近くの山に木があるのに使われず、自分の街に家を建てるのに海外から持ってきた木を使うみたいな、よくわからない状況になってしまいました。

50年前に植えた人工林を今こそ伐採して使うときなのですが、住宅建設の需要は大きく減少。木が育つ量に比べて、木を使う量が大きく下回っているのが現状です。その結果、植林から伐採までの“森林のサイクル”がうまく機能しなくなり、とくに多くの人工林が手入れされずに放置されています。「木はCO2を吸うから、放置されてても良いんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、カーボンニュートラルを実現するには森林の手入れが不可欠なのです。

森林の手入れがカーボンニュートラルの実現に繋がる理由とは?

出典:ぎふの木ネット協議会

森林の手入れは、植林してしばらくたったら一部の木を間引いて、若木が育ちやすい環境をつくります。成長しきった木は伐採して、木材として利用。使った分は新たな木を植えることで、森林のサイクルが円滑に回ります。

しかし、今の状況では国産木材の需要がそこまで多くないため、適切な伐採がおこなわれていないことが問題視されているのです。とくに人工林は、本来30~50年程度のサイクルで伐採する必要があるんですね。それはなぜか? 木は一定の年齢まで育つとCO2吸収量が減少するからです。

たとえば元気な中高生と高齢者では食事の量が異なるように、樹齢50年以上のスギは樹齢10~20年のスギと比べて、CO2吸収量が半分以下になってしまいます。「CO2吸収量が少なくなるだけなら植えっぱなしでも良いのでは?」と思われがちですが、年老いた木は朽ちるか、山火事で燃えるという最期を迎えます。そうすると、今まで吸い込んでいたCO2、正確に言うと炭素を排出してしまうんですね。カーボンニュートラルを達成するためには適切なタイミングで伐採したあと、加工して木製品として利用し、木の中にCO2を固定しておくことが重要になります。    

また、これからたくさんのCO2を吸い込んでくれる若い木を育てるためには、一部の木を間引く「間伐」という作業もしなければなりません。間伐は健康な木を育てるためには必須で、手入れが行き届いている山林の場合、植林された木の半分ほどが間伐されますね。怠ると山に生えているすべての木が中途半端な成長しかせず、時間経過とともにCO2吸収量も減少してしまうわけです。

森林を手入れしてサイクルを回すことは、CO2吸収量を増やし、排出量を減らすためにはとても重要なこと。あわせて間伐や伐採した木材を木製品にして使い続けることで、CO2を固定することができます。そして、森林の手入れや整備を進めていくためには、国産木材の利活用を促進させる必要があるのです。

キイノクスが目指す国産木材の利活用と流通プラットフォームの構築

国産木材の主な使用用途は住宅用の建材になります。一戸建ての家を建設する際の木材量は、一般的なテーブル約400台分に相当するんですね。最近の傾向としては、建築物の構造体に国産木材を採用する動きが増加していますし、商業施設の分野でもお店のインテリアやデザインに木材を取り入れる例が増えています。オフィス空間においても、木質化のトレンドが広がってきました。

しかし、前述した通り、木が育つ量に比べて木を使う量が大きく下回っているため、より国産木材の利活用を促進させる必要があるわけです。木の需要が少なければ、木を育てて伐採して売ろうとは思いませんからね。そのため、キイノクスではオフィス家具を中心に国産木材の商品を開発・販売しつつ、木材流通プラットフォームの構築を目指しています。

なぜプラットフォームの構築が必要かと言うと、林業の場合、農業みたいに採れたものをそのまま消費者にお届けすることができないからです。たとえば農家さんなら、畑で採れた野菜を産地直送できますが、林業では伐採して丸太にするまでしかできない。木を伐採したあとは製材して使えるサイズにし、木材卸や配送業者が流通させ複数の業者が加工し、ようやく消費者に届けられる。長い道のりを経て、皆様の手元に来るんですね。

 

また、木を伐採して森林の手入れをする林業の方々の多くは、アナログな方法で木材の取引をされています。まずは国産木材の流通をデジタル化し、効率化していくことで、林業従事者の方々にもっとお金が入るようにしたいと考えています。そうすれば消費者の方々にもお手軽価格で国産木材を提供できるような世界ができるんじゃないかと。

ただ、我々が急に「木材の流通システムを変えましょう!」って言っても、林業従事者の方々の心を動かすことは難しいはず。大切なのは、国産木材の需要そのものを生み出してから、流通を変えるアプローチをすることではないでしょうか。“国産木材の需要を生み出しながら流通を変える”この両輪でキイノクスは活動を続けています。  

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日本の山が抱えている問題や森林の手入れの重要性は、キイノクスが加盟している「ぎふの木ネット協議会」の動画で詳しく解説されています。

出典:ぎふの木ネット協議会

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