インタビュー

2023.07.24キイノクスオフィス「WOOBO」正規代理店ご紹介|下川たてじま林産株式会社(北海道下川町)

キイノクスは、国産木材の利活用や流通に関わる方たちとの革新的な取り組みを通して、木がより身近になる世界を実現させ、豊かな未来を創造するブランドとして、さまざまなプロジェクトを行っています。オフィスプロジェクトでは、国産木材を活用したオフィスアイテムをご提供しています。天然木のビジネスワークブース「WOOBO(ウーボ)」は、多くの企業様、自治体様で導入が進む人気オフィスアイテムのひとつです。

今回はWOOBOの正規代理店である、北海道下川町の下川たてじま林産株式会社様をご紹介します。同社は下川町産および北海道産の木材を専門とする地域商社。地域の木材を活かした内装や家具、什器などの商品開発・製作を手がけています。同社代表の麻生翼さんに、自社の活動や下川町産のトドマツの魅力と共にWOOBOの代理店として参画された背景をお聞きしました。  

麻生翼 プロフィール
下川たてじま林産株式会社 代表取締役
愛知県名古屋市出身。 北海道大学農学部森林科学科卒。大学在学中に北海道の自然と地方に魅せられ、農村に関わるために勤めた関西の種苗会社を退職後、2010年に北海道下川町に移住。NPO法人森の生活で地元の広葉樹の原板の乾燥事業を立ち上げた際に木材を扱ったのをきっかけに本格的に林産業 の世界へ。2022年、まちと森の持続可能性を高めることを目指し下川たてじま林産株式会社を創業。

 

農山村地域の持続可能性に挑戦するため林産業の世界へ

――下川町で林産業の世界に足を踏み入れることになった経緯を教えてください。

学生の頃から自然が好きでした。名古屋で生まれ育ったのもあるのか、自然と近しくなりたいという思いは強かったです。人間も自然の一部と捉え、人と自然がうまく調和するあり方がいいのではないかと思っていました。森林や動物生態に興味関心があったので、高校生の時に自分の目で見てみたいと自ら北海道大学に連絡を入れて、日帰りで大学の研究室を見学させてもらいました。その時に北海道大学のキャンパスはまさに私が求めていた環境だと感じましたね。広い空の下に自然が広がる環境に自分の身を置きたいと改めて決意し、北海道大学に進学をしました。  

   

大学時代に森林の勉強の過程で訪れた北海道の地方では、 自然を身体的に感じる暮らしの中で、人と人の距離も近く、北海道は数世代たどればみな移住者であることも多く、一つひとつのつながりが身近に感じられました。しかし、地方の魅力を実感する一方で、町の過疎化が進めば人が住めない状態になると知って、なんとかしたいという気持ちが強くなっていきました。2005年に大学の研究室の先輩が、森のある暮らしを広める活動をする「NPO法人森の生活」を立ち上げました。このNPO法人との出会いがきっかけで、下川町を訪れました。

大学卒業後は、農山村地域の持続可能性を高める民間企業で働きたいと、関西の種苗会社 に就職しました。ところが、営業担当として働く中でサラリーマンは性に合わないなと思うようになっていったんです(笑)。たまたま社会起業家のビジネスプランコンペに参加する機会を得て、その時のご縁でサラリーマンの生活を辞めて、北海道根室市でグリーンツーリズム事業を経て、NPO森の生活で人材募集をしていることを耳にし、2010年に下川町に移住して参画しました。  

   

――2013年にはNPO法人の代表に就任され、2022年に下川たてじま林産を創業されましたが、どのようなところに下川町の魅力を感じ、事業を展開されることになったのでしょうか?

下川町は人口3,000人程度の小さなまちですが、チャレンジを後押しする風土があり、人やまちが寛容だという印象を持っています。町内に7社8工場を有する林業が非常に盛んなまちで、構造材や内装材などを扱う工場はあるものの、エンドユーザーに近いところとつながれる取り組みが少なかったので、地域の森林資源や林産業の事業者の可能性を引き出すことをしたいと下川たてじま林産を立ち上げました。  

地域の木材を活かしたい

――下川町の木材専門商社として2022年に創業され、活動の幅が拡がる中で「WOOBO」の正規代理店になったのはなぜでしょうか?

下川町は過疎地域なので、地域の持続可能性を高めていくことに貢献したいという想いで活動をしてきました。その中で「WOOBO」は、地域の森林資源や地域の事業者の持ち味を活かせられるプロダクトだと感じました。

北海道は天然林が非常に多いのですが、全体の3割程度は人工林です。戦後の拡大造林期に日本全国で人工林が作られた際に、主にカラマツやトドマツが植樹されました。これらの木が増えていくと、およそ50年から60年程で材木を収穫するための伐採である主伐が行われます。カラマツは硬さがあるので建築の構造材などに活用されますが、一方でこれから増えてくるトドマツはカラマツよりも柔らかく、付加価値の高い用途の模索が喫緊の課題です 。

今後の資源量として増えるトドマツを積極的に活かすプロダクトをつくりたいと模索する中で、2年程前に「WOOBO」の存在を知りました。その後、親交のある会社さんから、「キイノクス」の取り組みに参画するGDI(グリーンデジタル&イノベーション株式会社)を紹介していただき、トドマツ の認知度を高められる取り組みになると思い、正規代理店として参画させてもらうことになりました。    

――トドマツにはどのような特徴があるのでしょうか?

木の断面を見るとそれぞれ特徴がわかります。木によって、断面の中心部と外側で木の構造や性質が異なるのですが、例えばスギの場合、中心部は赤みがあり外側は白さのある違いがはっきりわかる色合いをしています。トドマツは全体的にクセのないすっきりした白さの木肌をしているのが特徴です。

木がやわらかく傷がつきやすいのですが、 「WOOBO」では壁として使用するのでそれほど傷の心配もありません。また、比重も低いので運搬がしやすいといったメリットもあります。シンプルでスタイリッシュな印象を与えるので、「WOOBO」に活用すればブースも明るく感じられますし、トドマツの機能性が活かされるので相性がいいと考えています。    

――トドマツ仕様の「WOOBO」は、どのようなところで導入されていますか?

2台のトドマツWOOBOを製作し、現在はモニターとして札幌市のコワーキングスペース「bokashi Base(ぼかしベース)」に導入してもらっています。最近では、北海道湧別町の公共施設にも導入いただき、良いスタートをきれたと思っています。  

「木」を通じて、自然と人が混ざり合う文化をつくる

――今後、林業において必要なことは何だと考えていらっしゃいますか?

前提として、林業だけでなく、社会経済システムの構造そのものを変革すべき時期にあるのではないかという時代認識が大切だと思います。今の林業はフローに着目されています。つまり、植樹・伐採・販売 というサイクルを回してできるだけ地域にお金を生み出し、再投資をして森づくりや産業を維持するというものです。

2030年に向けてSDGsの達成をするための動きや2050年のカーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速していますよね。社会経済システムの構造ごとガラッと変えていかなければそもそも地球がもたないという考え方が今の時代であり、世の中が大きく変わろうとする節目だと思っています。

私たちが「林業」と呼んでイメージしているものが2050年には変わっている可能性もありますよね。私自身は自ら林業を営んでいるわけではありませんが、これからの林業について、ストックに価値を置く林業も重視すべきなのではないかと感じています。ストックすべきものとして大事なもののひとつは、炭素です。森林のもつ二酸化炭素を蓄えて大気中に排出しないようにする「炭素固定」という性質を発揮してもらうことです。

また、生物多様性が自律的に維持し続けられるような健全なシステムを蓄積していくことも重要です。これらは一朝一夕に実現できるわけではなく、荒れた人工林がいきなり豊かになることはないため、人間が適切に手を入れながら、生態系のシステムを自然の理に沿った形で丁寧に積み重ねていく必要があります。そして、これらのストックを最大化しつつ、人間が生活していく上で必要最低限の木材の供給がされているとしたら、どのような姿の林業や社会があるべきなのか、という問いが、これからの林業を含む社会経済システムを考えていくための大切な問いになると思います。

家を例に挙げると、伐採しなくても今ある建物を解体したパーツでまた新たな家を建てられるのが地球環境への負荷が低く、理想的なカタチだと考えています。すでにあるものを循環させる社会システムは今後さらに求められていくと思います。 

――下川たてじま林産としての目指したいことや展望を教えてください。

私としては、下川町というひとつの地域コミュニティに、自然と人が混ざり合っているような文化を育みたいですね。そのために、下川たてじま林産では、木材製品の付加価値を追求しながら地域の外に向けて経済活動をして、できるだけ地元にお金が落ちるようにすることを念頭に活動をしていきたいと考えています。

また、地域の人たちが地元の木を使いやすい環境づくりも積極的に取り組みたいですね。例えば、家を建てる際にすべて地域の力で建てるのが当たり前になるような世界をつくれたら面白いと思っています。アイデンティティを醸成していくことをベースに経済活動をすること、地域の中で地域資源が活用されていく動きをつくること、これらも当社でいつか手がけていきたいと思っています。

このような活動の先に、少し壮大ですが、上述したような未来の社会経済システムの中での林産業というものを考え、施行していけたらと思っています。

地域材や木のことに興味のなかった人も、「あ、いいな」と思ったものが、結果的に地元の地域に近いところでつくられたものだと知るというのが当たり前になる社会をつくりたいと考えています。その実現のためにも、「WOOBO」は大切なパートナーだと思っています。

<会社情報> 
下川たてじま林産株式会社
代表取締役 
麻生 翼
北海道上川郡下川町旭町209番地3  

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