インタビュー

2023.05.29国産木材で“木の家”を建てることの意義と住む人にとってのメリットとは?

日本政府の脱炭素社会に向けた取り組みやSDGs17の目標「15.持続可能な森林の経営」などの影響で、近年は国産木材の利活用に注目が集まっています。

国土交通省では地域型住宅グリーン化事業が推進され、各自治体でも補助金事業が展開されるなど、国産木材を利用した住宅への補助も手厚くなってきました。

この機会に国産木材を使った“木の家”を検討してみるのも良いかもしれません。では、国産木材を活用して家を建てることの意義、そして住む人にとってのメリットとは?

山林製材業として山々の自然と深く関わり、岐阜県産材100%の家づくりにこだわられている「ヤマジョウ建設」の代表取締役・長屋邦良さんにお話を伺いました。  

長屋邦良 プロフィール
代表取締役社長
私たち、ヤマジョウ建設の本社は、岐阜県美濃地方、関市板取(いたどり)にあります。ここは、長良川の支流、板取川流域に位置し、周囲を山々が囲む、古くから山林業のある地域です。ヤマジョウもまた山林製材業として山々の自然と深く関わってきました。山の木々のもつ大切な役割と人にもたらす恵みを大切と考え、計画伐採・植林、山林の環境保護そして、切り出した木材の有効利用を積極的にすすめています。

 

国産木材を利活用することで日本の山が守られる

国産木材を家づくりに使う理由はたくさんありますが、私はなにより“日本の山を元気にする”ために使う必要があると考えています。

現在の森林の多くは、戦後に造林されたものです。言わば自然のサイクルから外れてしまった人工林なので、健康な状態を維持するには、人間が間伐などの手入れをしなければなりません。

戦前は木材が高価だったこともあり、自然のサイクルのなかで間伐するだけで、山の健康状態は保たれていました。

しかし、戦後に人間がスギやヒノキなどの針葉樹を植えてしまったことで、不自然な山ができてしまったというわけです。

それでも、人間が植えた分を、人間が手入れしていれば問題はなかったのですが、折り悪く外国から輸入された木材がもてはやされる時代に突入してしまいました。

もともとは植林した日本の木が育つまでの期間だけ、木材を輸入しようという話だったのですが、当時の外材は製品管理がしっかりしていて使いやすく、安価だったんですね。

木材の輸入を始めた昭和30年ころは全国的に住宅不足だったこともあって、外材は大量に使用されました。

一方で、日本の木材はほとんど必要とされず、流通が少なくなり、山林の手入れが行き届かなくなってしまったのです。

国産木材の普及を妨げた理由としては、規格が統一されていなかったというのが大きいとされています。 各製材工場が独自の手法で切り出していたため、統一規格で製品管理されなかったんですね。    

そのため外材がもてはやされる時代が長く続きましたが、今は違います。

15年ほど前からJASの品質管理に基づいて、各製材工場が力を入れてきたため、品質が改善。価格に関しても、国産木材は高いというイメージがあるかもしれませんが、今では外材とほとんど変わりません。

輸送にかかるエネルギーコストを考慮すると、地球にやさしいのは国産木材だと言えるでしょう。

そして、国産木材を使うことは先ほどお伝えしたとおり、日本の山を元気にするためには必要なことです。畑の間引きと同じように、山も7~10年の周期で間伐などの手入れをしなければ、不健康な山になってしまうことでしょう。

間引きをされない山は栄養が行き届かず、ヒョロヒョロな細い木がいっぱい生えてしまいます。その木が密集することで山の地面に陽が差し込まなくなり、下草が生えない状態になってしまうんですね。

木や下草が育たないと鹿や猪などの動物は餌を求めて人里に来てしまい、鳥獣被害が起こります。さらに下草が育たないと土が流出し、自然災害も起こりやすくなる。

人々の安全な暮らしを守るためにも、日本の山林に植えられた木を使うことは必須と言えるでしょう。  

健康な山林は自然災害を防ぐ

日本は台風や大雨などによる土砂崩れが発生しやすい風土なので、山を健康にすることは非常に重要です。

手入れが施された山では、木々が大きく成長して山の斜面にしっかり根を張るので、雨に流された土や石を受け止める役割をしてくれます。

さらに豊かな土壌であれば多量の雨水が降っても蓄えられるため、洪水や渇水を防ぐこともできるでしょう。

日本に住む私たちの暮らしは、山の木々によって守られていると言っても過言ではありません。

しかし、日本全土で手入れがされていない山林も多いというのが現状で、保水能力の低下が問題となっています。

山を健康にして守ることは、ひいてはその周辺に住む人間の生活を守ることにも繋がります。

国産木材を使用し、山の手入れを正常化させるのは、自然災害を防ぐという意味でも大切なことなんですよ。  

国産木材を使った住宅のメリット

日本の山を元気にするため、国産木材を使用して手入れを促進させるべきという話をしてきましたが、もちろん木材を使った住まいには、ほかの建材にはない利点があります。

まずは調湿効果。木材は大気中にある空気を感じとり、乾燥しているときは水分を放出し、湿気がこもっているときは水分を吸収してくれるんですね。

住まいの内装に木材を用いることで、空間内の湿度をある程度一定に保てるため、快適な環境がつくりやすいというわけです。

湿度が高い日本の風土において、木の持つ調湿効果はとても重要だと言えるでしょう。断熱機能にも優れているので、気温差の少ない環境をつくりやすいのも木材の利点です。

また、木材は金属やコンクリートより、人間の体に近い素材と言われていて、静岡大学の実験でも木の優良性が実証されています。

木の香りが人間の心と身体をリラックスさせ、ストレスが軽減したというデータもありますね。

しかし、これらの利点は、実は木材共通のもの。国産木材でも外材でも効果は発揮され、実際に住まわれる方が実感できるほどの違いはないんですよ。    

外材は高温多湿な日本では調湿効果がうまく発揮できず、腐ったりカビが生えたりしやすいという話もあります。ですが、それは樹種や木を伐る時期が影響しているだけであって、一概に外材だからと言えるものではありません。

海外からシロアリを持ち込んでしまう問題も、今ではしっかり防虫・防腐処理がされているため、滅多に起こることではないですね。

しかし、外材にはひとつだけ危惧すべきことがあります。

防虫・防腐処理がされているということは、薬品が注入されているんですよ。薬品を薄めることで人体に直接的な害が出ないようにした、という研究結果もありますが、虫を駆除する薬が人体にとって良いか悪いかで言えば、良いはずがないんですよね。

私個人の考えとしては、カビやシロアリのことよりも、虫を殺すような薬品が使われているのが問題だと思っているので、弊社では外材を使用しておりません。

実際にその家で生活される方のことを考えると、大切なのはご家族の健康や住み心地ではないでしょうか。

安全面を考慮すると、外材よりも国産木材の方が優れていると言えますね。  

SDGsへ貢献できる国産木材の住まい

近年では政府が環境教育を推奨していることもあって、SDGsや森林保全に関心を寄せられる方が多い印象です。

国産木材を使う意義は山の健康を守るためですが、その意義がお客様にとっての何よりのメリットになるのでは……と感じることも多くなりました。

これまではおそらく、国産木材で建てようが外材で建てようが、お客様の多くは関知していなかったと思うんですよ。

補助金がでるからといった金額的なメリットで、国産木材を選んでいたイメージでしょうか。

ですが、最近のお客様、とくに若い方は、山の健康管理に貢献していることをすごく喜ばれるんですね。

弊社では、30平米くらいの一戸建てをつくるのに60立米くらいの丸太を使います。

実際に丸太が積まれた光景をお見せしながら「お客様が家づくりをすることで、この木の本数分、山を手入れしていることになるんですよ。」と伝えると、多くの方が感激されるんです。

国産木材を使って家を建てることで、環境保全や地域に貢献していることを実感できる。

実はその満足感こそが、お客様にとっての最大のメリットなのではないでしょうか。

エネルギーコストやCO2排出量を削減できるという意味でも、国産木材、とくに地元産の木材を使うことには大きな意義があります。

今では補助金や金利優遇制度もあって国産木材はかなり使いやすくなりました。

ぜひ国産木材を使って山林のサイクルを正常化する手助けをし、日本の山を元気にしていただきたいと思いますね。  

ヤマジョウ建設社長に聞く 地場工務店で家を建てるメリットと信頼できる工務店の選び方

      

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