コラム
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2023.08.08【レポート】「木材利用推進全国会議」第4回見学会

こんにちは!もりのたけのこです。
近年、木材の利用の促進に関する法整備が進み、公共建築から一般の建築物まで、様々な空間で木質化が進んでいます。今回は、国産木材の利用が環境や社会に与える価値の共有や、林業の生産性向上と新たな技術の普及を目指す「木材利用推進全国会議」主催の第4回見学会に参加した、キイノクス オフィス・ラウンジチームの阿部光延さんに、実際にどんな空間で、それらがどんな効果をもたらしていたのか、お話をお聞きしました。たくさんの建物や空間を訪れた2日間にわたる視察でもっとも印象的だった、木材建築を活かした医療施設・透析クリニックの「新柏クリニック」を中心にお届けします。

 

「森林浴のできるクリニック」をコンセプトに作られた木造・木質化空間

「新柏クリニック」は医療施設としてはめずらしい木造建築が採用された透析クリニックです。その特徴は、「森林浴のできるクリニック」をコンセプトに作られた、木造・木質化された空間にあります。

診療の中心となる透析室の柱と梁には、竹中工務店の「燃エンウッド」が用いられています。「燃エンウッド」は、独自の機構により高い耐火性を実現した、国産木材を使用した耐火集成材です。ベッドに横になった患者が見上げる天井には、不燃処理が施されたヒノキ板を用いることで、木のぬくもりが感じられる落ち着いた空間に。さらに、ヒノキ板の天井は内外に連続していて、閉塞感や圧迫感を感じさせません。

 

<画像:新柏クリニックHPより>

外観も一見すると医療施設とは思えないほど洗練されており、地域のランドマークとして親しまれているそう。ほかにもエントランスホールの扉や受付の壁面など、施設内の様々な箇所に木材が活用されています。

加えて、施設の南側には緑豊かなフィットネスガーデンが整備されており、リハビリや運動療法の場であると同時に、近隣住民の憩いの場としても喜ばれているそうです。

「森林浴のできるクリニック」というコンセプトが体現された、「新柏クリニック」の木造・木質化された空間の心地よさ、暖かさは、見学会の参加者たちから「もう少し滞在したい」と感想が漏れるほどでした。

 

木質化された空間が生み出す「働きやすさ」

「新柏クリニック」の見学を通じて特に印象的だったのは、そこで働く人々の明るく朗らかな雰囲気です。看護師たちが休憩の合間に食事をとっていた休憩室は笑顔であふれ、見学の案内を担当してくれた看護師さんは、患者や近隣住民とのエピソードも交えながら、働きやすさや、患者のために働ける誇らしさを話してくれました。

透析クリニックは、多くの患者の命と生活を支える医療施設です。血液透析は標準的に週3回、1回4時間ほど行なう必要があるとされています。高頻度・長時間の治療を受けなければいけない透析患者はもちろん、そこで働く医療従事者の負担も、決して軽いものではないでしょう。

実際、長期にわたって治療を継続する必要のある透析患者が、精神的負担やストレスを感じてしまうケースは多いと言います。また、そこで働く医療従事者においても、患者の命と生活を預かるプレッシャーや、長期間同じ治療を繰り返さなければいけない、特殊な環境によるストレスが離職の原因となることもあるそうです。

しかし、「新柏クリニック」の見学を通して見聞きした光景やお話からは、働く空間に関する辛さやストレスは感じられず、活き活きと誇りをもって働いているように見えました。木造・木質化された空間が生み出す心地よさや暖かさが、治療を受ける患者さんやそこで働く医療従事者たちに、間違いなくポジティブな効果を与えているのです。

 

“置くだけ”で木質化空間を生み出す「キイノクス オフィス」

「新柏クリニック」の例のように、空間を変え、人が抱く印象や感覚を変えることのできる木材には、まだまだたくさんの可能性が秘められているはずです。そのような木材の持つ、空間やそこに集う人たちのマインドを変える可能性を活かした取り組みのひとつが、「キイノクス オフィス プロジェクト」です。

「キイノクス オフィス プロジェクト」では、国産木材を使用したオフィス内装により、ひとにやさしく働きやすいオフィスづくりを提案しています。オフィスのデスク、キャビネット、エントランスなどに、国産木材を使用した繰り返し使えるアイテムを「置くだけ」で木質化された空間を生み出すことができるのです。

 

 

BIPROGY株式会社豊洲本社に常設されたモデルルームや木質化した会議室の利用者からは、「ゲストの反応も良く、会議がスムーズに進んだ」「お客様からも『木の部屋がいい』とご指定いただくようになった」「他の部屋にも木質化を展開してほしい」との声も寄せられています。

「キイノクス オフィス」ショールームのご案内はこちら

キイノクス オフィス導入後は「カーボンニュートラル貢献量証明書」を発行

また、「キイノクス オフィス プロジェクト」は利益の一部を森林植樹活動などを通して森林へと還元することで、次世代に向けた国産材の安定供給にも取り組んでいます。その一環として、キイノクス オフィスの導入後には、「カーボンニュートラル貢献量証明書」を発行し、森林への貢献を可視化しています。

国産の木材を使った、木のぬくもりを感じられるオフィスに愛着が生まれ、空間が心地よくなることで働く人のマインドも変わる。その取り組みが、社会や未来をよりよくしていく。木材の新たな需要を創造し、利活用を推進することが私たちにもたらす可能性は、限りなく大きいのではないかと思っています。

 

中・大規模建築物の木造木質化が今後の課題

<中・大規模建設の視察:隈研吾設計事務所設計の国立競技場>

一方で、国内の木材流通、利活用の推進は、様々な課題に直面しているのも事実です。

なかでも、「木材利用推進全国会議」第4回見学会における重要なトピックのひとつとしても上げられたのが、中・大規模建設における木質化・木造化の難しさです。

国内では、脱炭素化社会の実現などを主な目的とした法改正や、農林水産省における木材利用促進本部の設置以降、非住宅分野や中高層建築物での木材利用を推し進める動きが活発化しています。

しかし、そのような中・大規模建設を実現するための制度が適切に整えられていないという見方もあります。

戦後、防火上の観点から、都市部における木造建築は厳しく制限されてきました。近年にかけ、幾度もの法改正を通じて木造への規制は少しずつ緩まっているとはいえ、制限はいまだ厳しく、中・大規模の木造建築を実現するための高いハードルとなっています。

そのような課題を解決するためには、木材でありながら高い耐火・耐震性を備えたエンジニアードウッドなどの技術開発だけでなく、業界全体での行政・自治体への働きかけが求められているのかもしれません。

木材を活用した空間によって、患者の過ごしやすさや従事者の働きやすさを実現した「新柏クリニック」の例から、木材の利活用にはまだまだ大きな可能性が隠されていることを再確認できました。

一方、中・大規模の木造建築においては、行政・自治体への働きかけを含め、業界全体で取り組むべき課題が残されています。

キイノクスではこれからも、国産木材の新たな需要を創造し、利活用を促進するための活動はもちろん、社会・業界の一員として、林業変革に向けた働きかけを続けていきたいと思います。

 

 

訪れる患者さんや、そこで働く方々を木のぬくもりで優しく迎える新柏クリニックの取組は、人々だけでなく、日本の森の循環にも寄与していて、たくさんの笑顔が生まれている様子が目に浮かんできました。キイノクスコラムでは、これからも、様々な取り組みを紹介していきたいと思います。

 

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