インタビュー

2023.05.29ヤマジョウ建設社長に聞く 地場工務店で家を建てるメリットと信頼できる工務店の選び方

一戸建て住宅の新築を検討する際、全国規模で展開する大手ハウスメーカーやハウスビルダーに依頼するか、それとも地元に根付いている地場工務店に依頼するかで、迷われることもあるかと思います。

とくに国産木材で一戸建てマイホームを建てたい場合、メーカーや工務店ごとに国産材と外材、どちらを使うのかが変わるので、より判断が難しいのではないでしょうか?

そこでキイノクス編集部は、昭和30年に岐阜県美濃地方で創業されて以来、地元と密接に関わり、岐阜県産材100%の家づくりをされている「ヤマジョウ建設」を取材。

地場工務店で“木の家”を建てるメリットや工務店選びのポイントなどを代表取締役の長屋邦良さんに伺いました。  

長屋邦良 プロフィール
代表取締役社長
私たち、ヤマジョウ建設の本社は、岐阜県美濃地方、関市板取(いたどり)にあります。ここは、長良川の支流、板取川流域に位置し、周囲を山々が囲む、古くから山林業のある地域です。ヤマジョウもまた山林製材業として山々の自然と深く関わってきました。山の木々のもつ大切な役割と人にもたらす恵みを大切と考え、計画伐採・植林、山林の環境保護そして、切り出した木材の有効利用を積極的にすすめています。

 

地場工務店で木の家を建てるメリット①風土にあった住まいづくり

地場工務店の多くは、長らく地元に根付いているため、その地域の風土を理解しています。

全国展開されている大手ハウスメーカーは、地域差を考慮せずに一律で家づくりをしているところもあるなか、地場工務店は土地の風土に特化した家づくりをしているわけです。

たとえば岐阜や隣県の長野には、夏は多湿で暮らしにくく、冬は寒くて雪が積もるという風土があります。ですが、雪が積もるからといって、北海道と同じ性能の家を建てても住みやすくはならないんですね。

断熱性能を表すUA値が優れていても、多湿に備えた機能を考慮しなければ、岐阜や長野に住む方々にとっては心地良い住まいとは言えないからです。

地元で頑張っている我々のようなところは、その地に住む方々からの信頼を失いたくないから、地域密着で家づくりに関しても真摯に向きあってきました。

風土に合わせた住まいをつくり続け、その地に生きるお客様に合った家の機能をチョイスできる……それこそが地場工務店の強みだと思います。  

地場工務店で木の家を建てるメリット②国産木材を使いやすい

大手ハウスメーカーやハウスビルダーは、広範囲にわたって事業を展開しているため、組織の規模が大きく、それ故に方向転換しにくいという面があります。

外材よりも国産木材を使ったほうが、SDGsや住む人の健康面に配慮できるとわかっていても、なかなか方針を変えられなかったり、変えるのに数年単位の時間がかかったりするわけですね。

一方で地場工務店の場合、小規模の組織だからこそ、方向転換がしやすい。それこそ社長の判断ひとつで、国産木材を使用することができます。

一昔前までは、外材=安い、国産木材=高級品というイメージもあったかと思いますが、今では外材が高騰したことも相まって、価格差はほとんどないんですよ。

では、なぜハウスメーカーは価格もたいして変わらない国産木材を使わないのか? それは、施主にきちんと説明ができないと、クレームになる可能性があるからです。  

 

クレームになり得る理由としては、家づくりに使用する国産木材の多くは、樹木の中心部を含んでいる「芯持ち材」と言われるものだからですね。

芯持ち材は乾燥させる過程でしっかりと品質管理していても、ひびが入って割れることがあるんです。この割れは本質的には大丈夫なものなんですが、知らない人が見ると、強度の低い不良品や欠陥品と思われることが多いんですよ。

私たちのような地場工務店の場合、この割れは問題ないものだと、きちんと説明し、施主にご納得いただけるまで何度も説明してから家づくりをします。

ですが、大手ハウスメーカーだと営業マンが一律で説明するため、ベテランであれば説得力を持って伝えられたとしても、経験の浅い人だとそうはいかない。

本質的には問題がなくても、国産木材は上述した理由でクレームに発展する可能性があるため、大手ハウスメーカーは使用を控えてリスクヘッジしているわけです。

クレームがおきないような集成材や芯のない外材を使う企業が多いのは、そのためですね。私も過去に大手ハウスメーカーで営業マンをやっていましたから、一律の説明をするように組織化されたサラリーマン営業で、すべてのお客様が納得されるような説明をするのは難しいことを理解しております。

お客様に不安を与えないためにあえて国産木材を使わないのも、方針のひとつとしては間違ってないと思いますね。  

地場工務店で木の家を建てるメリット③大手ハウスメーカーより販売価格が割安

大手ハウスメーカーは材を大量に仕入れるため原価が安く、住まいの価格も安い。一方で地場工務店は個人経営で少量の仕入れしかできないため、材の原価が高く、住まいの価格も高い、と思っていませんか?

実は同じ規模、同じような性能の“木の家”を建てる場合、販売価格は10~15%くらい工務店の方が安くなるケースが多いんですよ。

たしかに大手ハウスメーカーは資材の調達能力に優れているのですが、全国規模で展開するための人件費がかかり、メディアでCMを流すなどの宣伝費もかかります。それらの販管費を住まいの販売価格に上乗せすることで、バランスをとっているわけですね。

一方で地場工務店は、原価が高い傾向にはありますが、個人経営で販管費が上乗せされていない分、販売価格を抑えることが可能です。

また、ほとんどの地場工務店は注文住宅をメインにしているため、施主の細かい要望が叶いやすい傾向にあります。 たとえば「リビングに造り付けの棚がほしい」といった、目に見える範囲での希望は、比較的安価で実現できることでしょう。  

信頼できる地場工務店の選び方とは?

地場工務店で家を建てる場合、「風土にあった家づくりができる」・「国産木材を使いやすい」・「同じ規模の木の家を建てるなら割安」などのメリットがあるとお伝えしてきました。しかし、残念ながらすべての工務店に当てはまるわけではないのです。

ハウスメーカーやハウスビルダーにも言えることではありますが、信頼できる工務店を選ばなければ、家づくりに失敗してしまうこともあるでしょう。

では、家づくりを依頼しようと思っている工務店が信頼できるか否か、どうやって判断するのか?

私は施主の質問に対して、どれだけ具体的に回答できるか、そして、住む人のことをどれだけ考えた答えになっているのかが、判断基準になると思います。

たとえば「耐震等級はどの程度を目指していますか?」と聞いて、「耐震等級は○○“相当”です」と答えたら、個人的にはアウトだと考えています。耐震等級は「1」が建築基準法レベルで、「2」は1より耐震強度が25%高い、最高レベルの「3」は50%高いものだと国が定めました。    

この耐震等級は「許容応力度計算」を用いて算出されます。

しかし、「耐震等級○○相当」の家というのは、別の計算式が用いられているので、住宅性能評価機関への申請はされておらず、正式な認定を受けていないですね。

ハウスメーカーの扱う家が、耐震等級○○相当と書かれていたため、購入を見送ったなんてお客様も実際にいらっしゃいました。

ほかにも「UA値はどこを目指していますか?」と聞いて、「ゆーえー値ってなんですか?」という返答が来たら、完全にアウト。

国の基準である「0.58を目指している」という返答があったとしても、「この地域で0.58の家を建てるのはなぜですか?」と聞いて、風土の特徴を捉えていなかったり、施主のご要望から外れた回答だったりしたら、信頼に足る工務店とは言えないでしょう。

地場工務店はひとつひとつ手づくりの注文住宅を扱っているのに、なぜ住む人の安全や快適さを考えた回答ができないのか、なぜ安心して家づくりを任せられるに値するだけの知識がないのか、と思ってしまいますね。    

大手ハウスメーカーと地場工務店では、家づくりの考え方が違います。ハウスメーカーは“家を売る”のに対し、地場工務店は“家を一緒に建てる”ことができるんですよ。

最近は家を検討される方もかなり勉強されているので、工務店がうやむやに説明してしまったら信用を得ることはできないでしょう。

実は大手ハウスメーカーやハウスビルダーでも、そこまで施主のことを考えていないケースもあるのですが、ブランディングやネームバリューで“当然やっている”と、お客様は思い込んでしまうんですね。

車の話でたとえると、有名な自動車メーカーの車にシートベルトやエアバックが付いてないと考える方はいないはず。大手で有名で、CMもバンバンやっているから、疑うという選択肢は生まれないでしょう。

でも、まったく聞いたことのない自動車メーカーだと、本当に大丈夫か、安いけど欠陥があるじゃないかと疑うはずです。本当に大丈夫かと疑われてしまう……それこそが今の地場工務店の立場だと言えるでしょう。

断熱性能や耐震性能などの家に対する客観的な評価を、国がはっきりと基準を定めたからこそ、地場工務店も大手ハウスメーカーと同じ土俵で戦えるチャンスが訪れました。

もちろん工務店は1社1社、真面目に家づくりをして地域のために頑張っています。でも、自分で頑張っているだけでは勉強も知識も足らず、大手ハウスメーカーに理論や技術力で劣る印象になってしまっているわけですね。

足りない理論を補うため、全国各地の地場工務店が地域ごとの「協議会」をつくろうという流れもあります。

工務店同士が協力しあって、勉強会や情報交換会をしたり、共同で商品を開発したり、アカデミックな研究結果を取り入れたりするなど、努力を重ねているわけです。

お客様目線で考えると、協議会に入っているか否かも、信頼できる工務店選びの基準になることでしょう。  

国産木材で“木の家”を建てることの意義と住む人にとってのメリットとは?  

      

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