コラム
キイノクスの取組に関するコラムを配信しております。

2023.11.17林業に必要な多様な価値観と視点

こんにちは!もりのきのこです。
キイノクスは、「人と木がともに活きる未来をつくる」ことを目指し、国産木材の利活用を推進しています。私たちの暮らしは、古くから木が身近にあり、家や暮らしの中のさまざまなシーンで木に触れていているにも関わらず、日本の木や森のこと、山のこと、そこに住む生き物のことなど、実は知らないことがたくさんあります。

そこで、キイノクスのコラムでは、林業会社や森林組合など、いろんな形態の林業事業体を経て、現在、岐阜県立森林文化アカデミーで講師を務める新津 裕先生に、森のこと、山のことを教えていただき、読者のみなさまと一緒に学んでいきたいと思います。
今回は、その新津先生をご紹介いたします!

 

新津裕 プロフィール
森林文化アカデミー講師
林業と言えば木材生産が主軸ですが、時代と共に森林と人との関わり方も変化していきます。そして現在の日本は森林の荒廃、森林管理の人材不足や獣害など様々な課題が山積みです。何かひとつの関わり方では解決できないそれらを、視野を広げて取り組むことで新たな解決の糸口になるのではないかと考えます。森林空間の利用と獣害対策を軸に、森林の関係人口を増やし、将来なりたい職業に「林業」がランクインできる世の中を目指します。

 

日本の森を守りたい。

新津先生との出会いは、2022年の夏、岐阜県で開催された「WOOD GO! 木がおもしろい」という体験型のイベントでした。

イベントの様子はコチラ

小中学生を対象とする「木のお仕事体験」や、子どもから大人まで楽しめる“木”にまつわるワークショップが展開されるなか、新津先生は子どもの「木こりなりきり体験」ブースと製材用の大きなのこぎりで丸太を切る体験コーナーで、子どもたちに“のこ挽き”をレクチャーしていました。子どもたちのキラキラとした笑顔と、活き活きとした新津先生の様子がとても印象的でした。

新津先生は、森や木に関わる生き方をめざす人のための専門学校「岐阜県立森林文化アカデミー」で、林業と森林空間の資源活用を軸に教えています。森を守りたいという意識が芽生えたのは、生まれ育った鎌倉で家の近くの山の木が次々に伐られ宅地化され、毎日見ていた風景が日に日に失われていくことにショックを受けた高校生の頃だといいます。

目の前の自然を守るために何かできないか、という思いから、環境問題を学ぶために大学へ進路をとり、卒業後は、住宅用の木質建材メーカー、森を育てる造林会社、林業会社が経営する森のキャンプ場、森林文化アカデミー、森林組合など、森に対してさまざまな角度から携わってきました。現在は、これまでの経験を活かしながら、森林文化アカデミーで森づくりの技術・森林空間の利用と獣害対策について教鞭をとっています。

林業の課題解決には “中と外” 両方の変化が必要

私たちは、家具や家、小物など、日常的に木材に触れていますが、それらはみんなどこかの山で育った木から作られています。山から伐り出された木は、たくさんの工程を経て、私たちのところに届きますが、それらの工程は縦割りになっていることもあり、価値観や慣習、思いには違いがあるそうです。一方で、私たち一般生活者は林業について、斧で木を伐るというイメージが強く、それ以外はどんなことをしているのかあまりよく知らないのではと思います。

現代において森を守っていくためには、社会全体の森や自然環境に対するリテラシーを上げていくことと、森や山に関わる事業のあり方といった“林業の中と外”両方の変化が必要な時を迎えています。

日本の山や森を守りたいという思いがあっても、縦割りとなってしまっている事業、文化や慣習、価値観の違いなどが障壁となり、変えたい思いがあっても変えることが難しいという現状を、新津先生ご自身もさまざまな林業事業での経験のなかで感じていたといいます。

林業業界は、森林の荒廃、森林管理の人材不足や獣害などたくさんの課題があります。その課題に対して、何かひとつの関わり方では解決できないため、視野を広げて取り組んでいくことが、林業の中と外の垣根を超えた新たな解決の糸口になるのではと、新津先生は考えています。

林業、きこりを憧れの職業にしたい

残念ながら、子どもたちのなりたい職業ランキングに林業は入っていません。でも、新津先生は林業、きこりが、憧れに値する職業であるとご自身の経験から感じるとともに、森を守り、豊かな自然があり続けるためには、仲間を増やしていくことも重要だと考えています。

森の関係人口をこれまで以上に増やし、林業を「魅せられる」きこりたちが台頭していけば、林業業界に少しずつ変化がもたらされることでしょう。森林の関係人口を増やすことで、きこりを子どもたちの憧れの職業にすることも目指しています。

新津先生は、森を守り、育てていくためには、林業の中も外も、それぞれの立場や慣習を超えて、情報や思いを橋渡ししてことが大切だと気づきました。各地で開催される勉強会に赴くほか、「伝える」ことをテーマに、森をフィールドとしたワークショップや体験会などでも活躍。小学生の林業・森林体験会や大人の森遊び、課題や環境を考える有志との会合のほか、大手企業の社員研修まで積極的に取り組んでいます。

それらの体験の中で、“いかに気軽に楽しく自然と触れ合えるか”、という点を大切にしているといいます。その楽しさの中での気づきが、参加者それぞれの日常のフィールドにおける「多様な価値観やあらたな視点でものごとを捉えること」につながっていくことを願っていると語られました。

新津先生に初めてお会いした体験型イベント「WOOD GO! 木がおもしろい」でも、この思いがとても伝わってきました。丸太の“のこ挽き”体験をしている子どもたちが楽しそうなのはもちろんですが、新津先生のコーナーは、小枝をナイフで削って作った木のモチーフがあったり、木を平たくした木のはがきがあったりなど、そこがデパートの催事場だと忘れてしまうほど、森の楽しさであふれていました。

さまざまな林業事業を経験してきた新津先生だからこそ見える、森が抱える問題やその改善への取り組みや思いなど、新津先生からの学びが楽しみです。

Contactお問い合わせ

キイノクスへご興味をもっていただきありがとうございます。
ぜひお気軽にご相談ください。