コラム
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2022.11.09木工シェア工房ツバキラボに聞く 国産木材「アベマキ」製品の魅力

木工シェア工房ツバキラボの代表である和田賢治さんは、岐阜県立森林文化アカデミーの教員時代、未利用樹種「アベマキ」の木材利用に着手。美濃加茂市からの依頼で里山に群生しているアベマキを研究・加工し、机として生まれ変わらせる「アベマキ学校机プロジェクト」を立ち上げました。

利用価値が少ない雑木をアップサイクル「アベマキ学校机プロジェクト」とは?  

木材として使えるようになったアベマキは、ツバキラボでも大いに活用されています。では、アベマキにはどのような魅力があるのでしょうか? 和田さんに伺いました。  

和田賢治 プロフィール
高校卒業後、アメリカオレゴン大学へ入学し、その後、イリノイ大学アーバナシャンペーン校へ編入(都市計画専攻)。大学卒業後、帰国し、トヨタ自動車入社するも、大量生産大量消費の世の中に疑問を持ち、父親から譲り受けた勉強机を見て、長く大事にされるものを作れる人になると決意し、退職。木工の世界へ。家具産地である飛騨高山の森林たくみ塾にて修行し、その後、岐阜県立森林文化アカデミーにて5年間教員を務める。2017年、独立し、「地域資源を活用し、人々の暮らしを豊かに」という理念のもと合同会社ツバキラボを設立。木製品の開発・生産業務や地域材活用のコンサルティング業務を請け負う。また「自分でつくる人を増やしたい」という思いで、一般の人が本格的な木工に取り組める会員制シェア工房も運営する。

 

アベマキ材の特徴と魅力とは?

アベマキの木材としての特徴は、一言で言えば“堅い”です。「アベマキ学校机プロジェクト」でも、堅さを活かして、丈夫で傷つきにくい天板がつくれました。

“色味”も独特なものがありまして、海外の樹種であるレッドオークに近い、赤みがかった重厚感のある色をしています。これは日本の樹種にはあまり見られない色なので、アベマキの魅力のひとつと言えるでしょう。

さらに美濃加茂市の里山で育ったアベマキに関しては、「スポルテッド」が多いという特徴もあります。あまり聞きなれない言葉だと思いますが、平たく言うと木材に侵入した菌などの影響で“黒い模様”になっている部分のことです。    

スポルテッドは自然が生み出した唯一無二の模様とも言われていて、世界中で愛好家がいますね。菌と言っても木材加工される時点では菌も死滅していて無害ですし、菌が腐食した箇所は強度が落ちますが、強度が求められる箇所以外で装飾的に使用する分には問題ありません。

ツバキラボでもスポルテッドでできた模様を活かしたタンブラーやコップを扱っています。アベマキ本来の奥深い色味にアクセントを与えてくれるので、アンティークのような雰囲気が出ていますよ。  

置時計やタンブラーにコーヒー? ツバキラボのアベマキ製アイテム

アベマキ製のアイテムで人気が高いのは、「寄木の小さな置時計」です。ひとつひとつ手で削りだした木片を組み合わせてつくっているのですが、そうすることで色の組み合わせが楽しめるんですよ。

アベマキは赤みがかった色味が特徴ですが、部分的に見れば白いところや黒っぽいところもあるんですね。それらを組み合わせることで、世界でひとつしかない色合いの寄木時計ができるわけです。

大きさは直径約50mm、高さは約58mmのコンパクトサイズですが、堅いアベマキを使っているのでずっしりとした重みもあります。お客様からはかわいいと評判で、プレゼントとして購入される方も多いですね。    

変わり種としては、「アベマキコーヒー」というものがあります。

“木”を木材として扱うだけでなく、もっとおもしろく使いたい、もっと可能性を広げたいと思い、友人で焙煎屋の川井克之佑さんに依頼して、いくつかの樹種を焙煎してもらいました。

樹種としてはメジャーなサクラやクリ、ケヤキなども試してもらったのですが、一番おいしく仕上がったのがアベマキのコーヒーだったのです。もしかしたら、木を焙煎してコーヒーとブレンドしたのは世界初かもしれません。

私も飲みましたが、飲み味がスッキリとした印象で、苦みや雑味が消えるんですね。爽やかな香りと優しいコクのコーヒーになったと思います。  

アベマキや未利用樹種の可能性を広げる取り組み

 

アベマキに関しては、今後も色味を活かしたものづくりをしていく予定ですが、いままでクリア塗装がメインだったので、染色も試してみたいですね。色合いがどう変化するのか、楽しみです。

堅さを活かした家具づくりも視野に入れていて、アベマキの可能性や用途をもっと広げるために試行錯誤しています。

ほかにも、現在は木工用として利用されていない“木”の可能性も広げたいと考えていて、実はアベマキ以外にも木工用途として活用事例のない木がいっぱいあるんですよ。

林業という枠組で伐採されたものは市場に流れ、買い付けされたものは木工用などに流れていくのですが、そうでない木材や資源も膨大にあります。

たとえば、街中の木に目を向けてみましょう。街路樹や公園の木、個人宅の庭木などは、切られたあとは産業廃棄物として処分されてしまいます。そういった本来捨てられてしまう木を活かすための仕組みづくりをしたいんですよ。

地元のネットワークを構築し、庭師や造園業の方々でチームを組み、切った木がある程度使えそうな大きさであれば、ツバキラボで地元の方々が使えるように再資源化する。このような仕組みづくりに取り組んでいます。  

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